於貴国当時珍物候鱈三懸送給候、云遠来、云芳志、賞翫不少候、仍北条氏政家臣松田尾張守二男笠原新六郎、豆州戸倉在城、不慮属当手励忠勤候之条、彼国大半属本意候、然者、小田原衆令出勢候之間、当口出馬、去廿日、至敵陣前乗懸、無二可討果所存候之処、取入于大切所蟄居候之間、不及了簡候、但於備万方任存分候条、可御心安候、委曲自是可申候、恐々謹言、
十一月廿二日
勝頼(花押)
上杉殿
→戦国遺文 武田氏編3627「武田勝頼書状」(米沢市上杉博物館所蔵・上杉家文書)
天正9年に比定。
今は珍しいものであります貴国の鱈を3懸お送りいただきました。遠い道のりといいお気持ちといい、味わいは少なからぬものです。さて北条氏政の家臣松田尾張守の次男である笠原新六郎は伊豆国戸倉に在城で、思いがけずこちらの味方となり忠勤に励むということで、あの国の大半は本意となりました。ということで、小田原衆が出撃してきたので、その方面に出馬し、去る20日に敵陣の前に乗り込んで遮二無二討ち果たす考えでいたところ、堅固な場所に逃げ込んでしまったのでそうはなりませんでした。但し、備えは思い通り万全にしましたので、ご安心下さいますよう。詳しくはこの者より申すでしょう。