去月晦日岡崎衆相動之刻、於牛窪原被官陶山善六無比類走廻、被疵一ケ所之由、甚以神妙也、弥可抽戦忠之旨可申聞之状如件、

永禄四 十一月廿八日

 氏真(花押)

牧野右馬允殿

→戦国遺文 今川氏編2758「今川氏真感状」(伊予史談会文庫所蔵各家系図陶山由緒記所収写真)

 去る月末日に岡崎衆が作戦した際、牛久保において被官の陶山善六が比類なく活躍し、1箇所負傷したとのこと。大変神妙である。ますます戦忠に励むよう申し聞かせるように。

寄親候松田上総介、対勝頼忠節之始、去十月廿八日向韮山被及行処、北条美濃守出人数間遂一戦刻、頸壱討捕条、神妙候、仍大刀一腰遣之候、自今以後弥可励武功者也、仍如件、

十二月八日

 勝頼(花押)

小野沢五郎兵衛殿

→武田氏編3632「武田勝頼感状」(愛知県南知多町・加古貞吉氏所蔵文書)

天正9年に比定。

 寄親であります松田上総介が、勝頼に対する忠節の初めとして去る10月28日に韮山に向かい作戦したところ、北条美濃守が迎撃したので一戦を遂げた際、首級1つを討ち取りました。神妙です。よって大刀1腰を遣わします。これ以後はますます武功に励むように。

今度小山地、徳河取詰之処、数日籠城、被尽粉骨之条、当城堅固、併其方戦功故候、依之後詰之行任存分候、令感悦候、自今以後、弥忠節可為肝要候也、恐々謹言、

九月廿一日

 勝頼(花押)

岡部丹後守殿

→戦国遺文 今川氏編2573「武田勝頼感状」(土佐岡部文書)

天正3年に比定。

この度小山の地を徳川が取り囲んできたところ、数日間籠城し粉骨を尽くされましたので小山城が堅固なのとあなたの戦功によるものです。これにより後詰の戦いを思う存分できました。感じ入っています。これ以後ますます忠節が肝要となるだろう。

此度西原小屋へ敵取詰候処ニ、彼地ニ籠走廻候、無比類候、弥於相稼者、御本城様へ申上、可引立者也、仍状如件、

永禄十三[午庚] 五月廿二日

 氏忠(花押)

西原源太殿

→戦国遺文 今川氏編2455「北条氏忠感状」(沼津市三枚橋町旧住・西原文書)

この度西原小屋へ敵が攻め寄せたところに、あの地で籠城し活躍しました。比類がありません。ますます功績をあげるならば、御本城様へ申し上げて引き立てるものである。

去十四日、於吉原頸壱ツ討捕事、太忠節也、弥可抽戦功状、仍如件、

永禄十三 五月廿二日

 氏真(花押)

町田縫殿丞殿

→戦国遺文 今川氏編2453「今川氏真感状」(富士市岩本・町田文書)

去る14日、吉原において首級1つ討ち取ったこと、とても忠節である。ますます戦功にぬきんでるように。

去廿九日、武田信玄冨士城江被取詰之処、於南口最前鑓合、無比類走廻之段、太以神妙之至也、守此旨、弥可抽戦忠状、仍如件、

永禄十二年 七月五日

 氏真(花押)

井出伊賀守殿

→戦国遺文 今川氏編2411「今川氏真感状」(東京都杉並区・観泉寺所蔵浅川井出文書)

 去る29日、武田晴信が冨士城へ攻め寄せたところ、南口において前線で槍を合わせ、比類なく活躍したことは、とても神妙の至りである。この旨を守り、ますます戦忠にぬきんでるように。

去五日、於本宮山竭粉骨、無比類走廻、蒙疵之段、感悦之至也、弥於当城、可被励忠節者也、依如件、

永禄十二年 卯月廿日

 氏真(花押)

西原源太殿

→戦国遺文 今川氏編2354「今川氏真感状」(西原文書)

 去る5日、本宮山において粉骨を尽くし、比類なく活躍して負傷した段、感悦の至りである。当城においてますます忠節に励まれますように。

昨十三夜・於薩埵山、敵夜掛之刻、敵壱人新井小次郎与合討、高名感悦候、弥可竭粉骨者也、仍如件、

永禄十二年[己巳] 三月十四日

 (北条氏政花押)

清田内蔵佐殿

→戦国遺文 今川氏編2312「北条氏政感状」(浄光寺文書)

 昨日13日夜、薩埵山において、敵が夜襲してきた際に、敵1人新井小次郎と相打ちとなり、高名に感悦しました。ますます粉骨を尽くすように。

当城江令供相越趣、無比類之処ニ、相州■■可走廻由、弥以感悦也、猶以不準自余■引立召使可申候、仍如件、

正月十五日

 氏真(花押)

四宮惣右衛門尉殿

→戦国遺文 今川氏編2249「今川氏真感状」(第七回錦糸町西武大古本市出品文書)

花押形より永禄12年に比定。

 当城へ共をして移ってきたのは比類がないことであるところに、相模国(へ使者を務める?)活躍するとのこと、ますますもって感悦である。なおもって他とは違って引き立てて使っていくだろう。

昨十三夜、於薩埵山、敵夜懸之刻、敵壱人針宇文六与合討、高名感悦候、弥可竭粉骨者也、仍如件、

永禄十二年[己巳] 三月十四日

 (北条氏政花押)

多田新十郎とのへ

→戦国遺文 今川氏編2311「北条氏政感状」(多田文書)

 昨日13日夜、薩埵山において敵が夜襲してきた際に、敵1人針宇文六と相討ちとなり、高名に感悦しました。ますます粉骨を尽くすように。