以前テレビ番組で、城が好きな芸人が「こいつ、天守閣を見たら何城か判るんだって 😯 」と揶揄されていた。そしていきなりクイズが出た。表示される天守閣を見て城の名前を当てろということだったが、モニターに出てきたのは熊本城。どこからどう見ても熊本城。宇土櫓の辺りから仰角で撮影し、向かって左に大天守という周知のアングル。

その芸人は暫く視線が動いていた。その気持ちは判る。「 🙄 さあこの写真で判るか!」と大上段に構えたクイズである。高知城か掛川城、犬山城か清洲城みたいなひっかけや、名もない復興天守が来るかなと思いきや……熊本城である。どんな罠があるのかと、彼が半分疑問文で「熊本城?」と答えると、スタジオ全体が「ええー」というか「おおー」というか不思議な反応をしていた。その後の司会者が「正解! でもなんで判るんだ?」と訊いて来る。

城好き芸人が困っていた。もし私が訊かれても困るだろうと思う。熊本城天守と何を間違えろというのか。下見板張りが黒いから松本城か岡山城……いやいや、さすがにそれは間違えない。この後、「こんなマニアックな知識をどこで手に入れるのか」とか「『おたく』やマニアは恐ろしい」という展開になったのが印象的だった。

この程度でマニアなのだろうか。姫路城・名古屋城・熊本城・大阪城は国民的常識として天守の形状を覚えているのではないか。それに準じて、弘前・松本・丸岡・犬山・彦根・丸亀・伊予松山・備中松山・高知・宇和島・松江はぼんやりでも判るのではないか。これまではそう考えていた。しかし、いわゆる歴史ブームと呼ばれる昨今であっても、知識は浸透していないようだ。

寺院建築だと見分けがつかないのも止むを得ない気がする。私も多数ある五重塔はごっちゃだ。浅草寺も法隆寺もはっきりとは判らない。しかし、破風や層数、瓦や窓が明快に異なる天守で間違いが生じるとすると、歴史に興味のない人(いわゆる一般人)は地元の天守ですら形を覚えていないのかも知れない。そして覚えている人間のことは強烈な城マニアと受け取るようだ。彼らは天守がないことを指して「城がない」という。逆に、歴史根拠のない模造天守であっても気にしていない。

稜線を歩いていて急に立ち止まり「これ、堀切じゃない?」と縄張りを妄想し出す御仁はマニアと言っていいだろうが、その場合一般人はどう受け取るのだろうか。興味がわきつつもまだ試したことはない。

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2 comments untill now

  1. こんばんは。
    遅くなりましたが、今年もよろしくお願いいたしますm(__)m

    そんな番組があったんですね。楽しそうです、見ていたらツッコミ入れまくっていたかと思いますが(笑)
    私も、昨今の歴史ブームを見ていると、国宝の天守閣はみんな答えられると思っていたんですが、違うんですか?。すっごく詳しい人と、全然わかってない人の差が激しくなってきているんでしょうか?面白い現象ですね。

    「戦国大名の日常生活」を読みました。なかなか、楽しい本でした。ご紹介ありがとうございます!

  2. コメントありがとうございます。こちらこそ今年も宜しくお願いします。

    歴史については、かなり砕けた内容でも『史実に沿った』と言っているテレビ番組が多いように思います。専門書を読んでブログに感想を上げることで、ネット上で学説の紹介ができたらいいですよね。最近は余り書籍紹介していません……反省。

    ミネルヴァ書房の日本評伝で、2月に『武田勝頼』が出るみたいです。著者は笹本正治氏なので、かなり本格的な予感です。