NHKライブラリーから出されたこの本は、著者:舘鼻誠がNHKラジオ講座で「戦国争乱の群像」を担当していたことから刊行された、戦国時代の入門書である。
これまで紹介した書籍とは異なり、生の古文書を扱うというよりは、最新の学説を取り入れたよりダイナミックな戦国時代像を解説している。エピソードを中心に、文の密度も低めで丁寧に記述しているが故に入門書として取り上げてみた。どのエピソードも、現代人の感覚ときちんと関連付けているのが心憎い。
中でも第5章の「乱世を生きる女たち」が出色だ。実家を背景に家政を行ない、夫を叱り、子の行く末を案ずるという姿は、現代の自営業家庭にも充分通ずるのではないかと思う。
非常に微細な点(羽柴氏が後北条氏との決戦をいつ決断したか、寿桂尼と花蔵の乱の相関性など)では説明が不足しているような気がするが、そういったことよりも先ずは戦国の全体像を把握してこその入門書であり、全く問題にはならないだろう。
※舘鼻氏はブログも開設しており、小早川領の記事をエントリーしている。