何比御帰候哉、我ゝ者、與風罷帰候、其時分迄者、御帰之沙汰不承候キ、先日者、自小田原御札、殊船之 御印判調候而、我等迄満足ニ候、態是又御札、殊ニ初物給候、則致賞味候、然者御世上強敷候而、咲止ニ候、我ゝ罷帰砌者、以之外之様ニ候つる、近日者如何候哉、静ニ候、乍去自京都津田・富田と申人、于今沼津ニ有之由申候、石巻方をハ城中ニ小者一人ニ而指置、莵ニ角ニ是非者、来春と存候、此度以御使如去年証人之義、各ヘ被 仰付候間、其趣一両日已前申届候、御使衆へも具ニ申分候、併御国なミ人次之所、無了簡候、扨又籠城之支度、早ゝ可有之候、万吉重而可申候、恐々謹言、
極月十八日
 上野 康英(花押)
高橋丹波守殿 参

→戦国遺文後北条氏編3578「清水康英書状」(高橋文書)

天正17年に比定。花押後筆の可能性あり。

 いつ頃お帰りになりましたか。私達はふと思い立って帰りました。その頃まだお帰りになるとは聞いておりませんでした。先日は小田原よりお手紙をいただき、特に船のご印判をご用意いただいて、私も満足でした。わざわざこれまたお手紙で初物をいただきました。すぐに賞味いたしました。ということでご世情が不穏になってきて、残念なことです。私達が帰る際には、もってのほかの状況でした。近頃はいかがでしょうか、静かなものです。ではありますが、津田・富田という人が京より沼津に今来たといいます。石巻方を城中に小者1人で差し置いています。とにもかくにも、是非は来春と思われます。今回は去年と同じように、使者を送って人質を集められますので、その旨を一両日以前に申し届けます。お使いの衆へも詳しく説明をします。そしてご分国一斉に全ての人とのことで、了見がありません。さて、また籠城の準備を早々にお願いします。色々とまた申します。

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