廿二日之文、廿三[酉口]披見、普請積見届候、
一所ニこそより候物なれ、高山之上ニ付芝迄可致積ハ、何事ニ候哉、近比うつけたる致様ニ候、一井ツゝなとハ、時分時刻ニこそより候へ、来年しても来ゝ年しても不苦、井ツゝなとをふしんの積ニ致候、是ほとのうつけたる事致し候ハン与ハ、ゆめゝゝ不覚悟候、はや年寄候まて物をも申付候間、しんさうきやう遠近を分別いたすへき間、先さし当り五日三日之内ニ敵を可請ふしん計こそ可致ニ、なんてもなき事計を書立候、普請所なき故に致たる事歟、一向不及分別候、来一日も有之而人足を仕払、二日ニ其地を罷出、可致帰参、畢竟所によりてふしんハ致物ニ候、其地なとハいちご井ツゝなとなくても不苦候、尺木や竹ニ而ゆいまハしおく物ニ候、此ようにふしんの積致候ハゝ、いつかたも出来すましく候、無用の所をやめ、さしかゝり敵へ向而可入事計致候、くゝり木戸なとの積もへたにて候、小田原にてさへ一二ケ所より外無之候、か様ニ分別之たらさる者ニ候哉、以上、
追而内藤連判故〓[与+欠]近比不得聞候
七月廿四日
氏政判
岡本越前守殿
→小田原市史 城郭編27「北条氏政書状写」(岡本氏古文書写)
花押形より天正10年に比定。
22日の文は23日酉口に読み、普請計画を見届けました。
一、場所にこそよりますが、高山の上に芝を植える計画とは何事でしょうか。近頃ではうつけた行為です。一、井筒などは、状況や時宜によるもので、来年しても再来年しても問題なく、井筒などを普請計画に入れるなど、これほどうつけたことをしようとは、全くもって思いませんでした。もはや年寄りとして物を申し付けているのですから、『しんさうきやう』遠近を分別なさるべきなので、まず差し当たり数日の内に敵を迎撃できるような普請ばかりをするべきなのに、どうでもいいような事ばかりを書き立てています。普請する所がないからこのようにしているのでしょうか。一向に分別になっていません。来る1日で人足を撤収し、2日でその地を出て帰ってくるように。結局場所によって普請すべきです。その地などは一時的なものですから、井筒などなくても問題ありません。尺木や竹で囲んでおくものです。このような普請計画をしていたら、どこも完成しないでしょう。不要な工事を止め、攻撃してくる敵に向かうことだけにしなさい。くぐり木戸などの計画も下手です。小田原でさえ1~2箇所しかありません。こんなに分別のない者だったのでしょうか。以上。
追伸:内藤は連判のせいか近頃連絡がありません。
[…] 北条氏政、岡本越前守に、其城普請の不備を糺す […]