来翰珍閲、仍当調儀、遅延不審之由、尤無余儀存候、当口之事、先月以来打続大雨故、洪水万方通路、不自由之間、以大軍之動難成候間、延引差行無之候、

一、越衆出張之由、風聞候哉、于今無其儀候、上州堺へ打出之由、先月半時分申来候キ、其以後無是非候、実儀有之者、可申入候、

一、東口之事、始宇都宮・両皆川・新田、当方江申寄候、就中、成田事、我ゝ刷を以、時宜落着、今明之内以代官、可申届候、可御心安候、

一、其口珍敷義有之者、節ゝ可蒙仰候、

一、一宮先蹤被遷新地、彼社中并社宿以下、守護不入御判形之事承候、則申調進置候、委細、猶狩野飛騨守可申候、恐ゝ謹言、

閏八月廿五日

 氏照(花押)

正木左近大夫殿 回章

→戦国遺文 後北条氏編977「北条氏照書状」(早稲田大学図書館所蔵三浦文書)

1566(永禄9)年に比定。

 いただいた書状を珍しく拝見しました。さてこの調儀が遅延しているのが不審であるとのこと、ごもっともで余儀のないことと思います。当方面のこと、先月以来打ち続く大雨ゆえ、洪水で全ての通路が不自由になりましたので、大軍での行動は難しいので、延引してさしたる作戦もありません。一、越後衆が出動したとのこと、風聞があるでしょうか。今はそれはありません。上野国の国境へ出撃したとのことを先月半ばの時分にも申し来たりました。それ以後何もありませんでした。本当の内容であれば報告して下さい。一、東方面のこと。宇都宮を初めとして両皆川・新田が、当方へ申し寄ってきました。とりわけ成田のことは、我々の調整をもって時宜落着し、『今明之内』(今日明日には?)代官によって申し届けるでしょう。ご安心下さい。一、そちら方面で珍しいことがあったら、都度ご報告をお願いします。一、一宮が先例により新地へお移りになり、あの社中・社宿以下は守護不入のご判形とのこと承知しました。よって調整して進めておきます。詳しくは更に狩野飛騨守が申すでしょう。

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