大平致帰国付而、乍便啓達、抑其以来令絶音問、意外令存候、其時分態預脚力候、於宇都宮・皆河堺越度候、無是非存候、雖然、御状三通ハ無相違自皆河参着、披見申候、盛興御遠行、於拙者落力、御心中察存候、更以、難尽帋面候、内ゝ此趣疾雖可申達候、路次不自由故、乍存罷過候、全不可在私曲候、何様企使僧可申入候、兼又、当秋之動、由良信濃守依懇望候、去十五日出張、十余日在陣、大胡・厩橋領無所残成于〓[土+盧]、被納馬候、近日重而当口可為出張候、其口ゝ御弓箭達、如何無御心許存候、節ゝ御音問、可為祝着候、次、大平・小関・新井罷上付而者、拙者所へ直ニ可参由、向後者堅被仰付、可為本望候、事ゝ令期来信候、恐ゝ謹言、

八月十二日

源三 氏照(花押)

蘆名殿 御宿所

追啓、去年被懸御意候、鷹・鶴・雁・鴻、無比類致逸物候、然を、難去自方所望、無了簡遣候、其以来、鴻鳥・鷹持絶候、鴻、逸物之鷹所望存候、被懸御意候者、可為大慶候、為其、抛思慮申候、此外不申候、以上、

→戦国遺文 後北条氏編1718「北条氏照書状」(名古屋大学文学部所蔵文書)

1574(天正2)年に比定。

大平が帰国するのにつけて、ついでですがお伝えします。そもそもそれ以来音信を絶っていましたが、意外なことでした。その自分は折り入って飛脚を使い、宇都宮・皆川との境界で落ち度がありました。是非もないことです。とはいえ、ご書状3通は相違なく皆川から到着して拝見しています。盛興が亡くなったこと、私も力を落としています。ご心中お察しします。更には紙面では尽くしがたいことです。内々にこの趣旨を早く申し達そうと思っていましたが、交通が不自由なので、知っていながら時間が過ぎてしまいました。私曲があってのことでは全くありません。どんな様子かは使僧を用意して申し入れます。かねてまた、この秋の作戦、由良信濃守の懇望によりまして、去る15日に出動、10余日在陣しました。大胡・厩橋領を残すところなく黒土にして、馬を納められました。近日は重ねてこの方面へ出動するでしょう。そちら方面各所の戦況はいかがかとお心もとなくお考えです。節々でのご連絡は祝着なことでしょう。次いで、大平・小関・新井が上ってくる際は、私のところへ直接来るようにと、今後は堅くご指示下されば本望なことです。その他諸々は次の機会を期します。

追伸:去る年お気にかけていただいた、鷹・鶴・雁・鴻は、比類のない逸物でした。それを、どうしても方々より所望され、考えもなく渡していたら、それ以来鴻と鷹はなくなってしまいました。鴻と、逸物の鷹を所望します。お気にかけていただけるならば、大慶でしょう。そのために、思慮をなげうって申します。このほかには、申すことはありません。

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