急度預御一翰御使ニ候、再三披見恐悦候、如来書、其以来遠境不自由故、絶音問候、仍去夏御息動之剋、御立遂面上本望候、尤於向後対御父子へ不可存疎隔意候、然而愚息左衛門大夫別而貴殿申合候由、連ゝ申事ニ候、愚老本望不過之候、扨又今度氏政不図出馬、当地関宿へ被取詰候処ニ、兼日之従擬、敵流之外早速本城へ引籠候、流之儀更以渡無之深早候間、流之外曲輪三ケ所自昨日普請堅固ニ被致之、人衆無不足差置、縦敵取掛候共、心易相拘候様ニ可被申付段ニ候、其上世上静ニ付而者、流之儀如何様ニも可被及行段迄ニ候、爰許取寄之模様、御使可為御見聞間、具不及申達候、猶御息左衛門太郎殿無二ニ可申合覚語ニ候、委由御両口ニ申達候、恐ゝ謹言、
霜月四日
 北条上総入道 道感(花押)
[宛名欠]

→1733「北条道感(綱成)書状写」(香取大禰宜家文書)

天正2年に比定。

取り急ぎのご書状を預かりましたご使者です。再三拝見して恐悦しています。来書のように、それ以来遠隔地の不自由ゆえに音信を絶っていました。さて去る夏ご子息が出動した際に、(そちらを)お立ちになり面会を遂げ本望に思います。もっとも、今後においてはあなた方父子へ疎隔の意はないでしょう。そして愚息の左衛門大夫が、格別に貴殿に申し合わせていること、幾度も申している事です。さてまた、この度氏政が急に出馬し、この地関宿へ取り詰めましたところに、以前のように、敵は流れの外に出てすぐ本城へ引き籠りました。流れは更に渡れないほどに深く速かったので、流れの外に曲輪3箇所を昨日から普請し堅固になさっています。部隊を不足なく配置し、たとえ敵が攻めかかっても安心して保持できるようにお申し付けの段取りです。その上世上は静かになっていますから、流れのことがどうなろうとも、作戦を行なえるように取り計らっています。こちらで攻囲している様子は、ご使者がご見聞なさるでしょうから、詳しくは申し達すに及びません。さらにご子息左衛門太郎殿にもっぱら申し合わせる覚悟です。詳しいことはご両人の口から申し達します。

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