先日酒井入道ニ薩埵陣之刻、伝馬之御判ニも為無之、恒之御印判に而被下候、一廻物書誤か思、是非不申候、然ニ今度板倉ニ被下御印判も、伝馬を常之御印判ニ而被下候、御印判之事候間、無紛上、無相違候得共、兼日之御定令相違候間、一往其方迄申遣候、不及披露儀候哉、先日酒井ニ被下も、又此度も、其方奉ニ候間、申遣候、始末此御印判ニても、伝馬被仰付候者、其御定を此方へ被仰出模様、御落着可然候歟、伝馬之者も可相紛候哉、用捨候て可披露候、謹言、

五月十九日

氏政(花押)

遠山新四郎殿

→小田原市史 史料編 中世2 小田原北条1「北条氏政書状」(長府毛利文書)

1569(永禄12)年に比定。

先日薩埵陣の際、酒井入道に伝馬の印判がなかったため、通常の印判で発行しました。一度は物を書き誤ったと思って是非を問いませんでした。そうしたらこの度板倉に発行した印判も、伝馬を通常の印判で通達しています。印判のことなので明快にした上で相違なくすべきですが、兼ねての定めから相違しているので、一応あなたに申し送りました。伝達しなかったのでしょうか。先日酒井に下されたものも、今度のものも、あなたが奉じたものなので通達します。最初から最後までこの印判で伝馬を発して、その定めをこちらから指示していたのでは、安定運用できるでしょうか。伝馬の者も紛糾するのではないでしょうか。取りやめて報告して下さい。

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