廿日之状、今廿一辰刻到来、一 矢普請之儀者、先段氏直用所ニ而是へ被尋候時、諸人聞前にて、拙者申出候、氏直同意候キ、此度之矢普請者、御曲輪之内ニ候へ共、既大構出来よりして者、曲輪之内之者すましき與云儀、有間敷候、先氏政矢普請を一人可出與申定候、是を以すミ申候、目くらにても、舞ゝにても、猿楽にても、すへき迄ニ候、時による物にて候、況前ゝ之御印判少も入間敷候、此上者、別ニ云事有間敷候、いやなら者、当方を罷しさるへきにてすミ候、此分有御心得、其元可被仰付候、猶難渋之者をハ被搦、此方へ可有御越候、若搦儀いかゝと思召候者、押立可有御越候、如此申候上、我侭をいわせて可置なら者、清水代大屋善左衛門可切頸候、我ゝ如此之儀申述儀、不似合候へ共、陰遁も時分ニよる物にて候、御分別肝要候、恐々謹言、
 追而、此外之義をハ別通ニ申候、
正月廿一日
氏政(花押)
美濃守殿

→神奈川県史 資料編3「北条氏政書状」(堀江伴一郎氏所蔵文書)

1590(天正18)年に比定。

 20日の書状、現在21日の辰刻(10時)に到着。一、矢普請のことは、先に氏直の用所にてこれをお尋ねの際、諸人が聞く前で拙者が申し出て、氏直が同意しました。なので、この度の矢普請は曲輪内ではありますが、既に大構えが出来たことからといって、曲輪の内側はしないでおこうなどとは、あるまじきことです。先に氏政が矢普請を1人出すべきと申し定めました。これで済んだことです。盲人でも舞々でも猿楽でもいいので、すればよいことです。状況によるものです。言うまでもなく、前々の御印判は少しも要りません。この上は、別に言うこともありません。いやならば、当方を罷免すれば済むことです。このことを心得て、あなたのほうで指示なさって下さい。さらに、抵抗する者を捕縛してこちらへ送って下さい。もし捕縛がどうかと思われるなら、押し立ててお越し下さい。このように言った上でわがままを言わせておくならば、清水の代理である大屋善左衛門を斬首すべきでしょう。私がこのように申し述べることは越権ではありますが、隠居も時節によるものです。ご分別が肝要です。

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