今度彼病者、療治手尽既事極処、以良薬得減気、打続本覆之形ニ被取成候、誠不思議奇特、於愚老大慶満足不過之候、
鎌倉様へも意趣具可言上候、於東国御名誉不及是非存候、
仍刀菊一文字、氏綱不離身致秘蔵候、此度進置候、猶遠山左衛門尉可申候、恐々謹言、
八月廿日
氏康(花押)
(懸紙ウハ書?)「豊前山城守殿 氏康」
→神奈川県史 資料編3「北条氏康書状写」(豊前氏古文書抄)
1557(弘治3)年と比定。
この度あの病は、療治に手を尽くして既に事は決したと考えていたところ、良薬によって健康を得て、引き続き本復の形をとられたのは本当に不思議な奇跡です。愚老にとっては大きな満足と言っても言い過ぎではありません。義氏様にもこのことを詳しくご報告しますので、東国においてのご名誉は語るまでもありません。そこで、氏綱が肌身離さず持ち秘蔵していた菊一文字の刀をご進呈します。さらに遠山左衛門尉が申し上げるでしょう。