以幸便染一筆候、仍遠州之体実儀候哉、無是非次第ニ候、駿州之内彼方之調可然様候て、過半駿之内可相破様ニ候者、早々可致注進、此表者焼動迄之事候条、以夜継日急ニて可納馬候、又遠州者心替候へ共、駿州衆各守氏真前、自元三州之備も氏真可有本意様ニ候者、以次暫之在陳、関東之義可明隙候、何ニ両様其方具致見聞、以早飛脚注進待入候、謹言、

壬十二月六日

信玄(花押影)

佐野主税助殿

追而、駿州必可相破様ニ聞届候者、此時候間

早々納馬、彼国之本意可相急候、

此所々能々聞届、注進尤ニ候、又彼方へ越書状候、彦六郎へ

渡候間、被指越候者、早々可被届候、以上、

→戦国遺文 武田氏編「武田信玄書状写」(彰考館所蔵「佐野家蔵文書」)

閏12月は1563(永禄6)年。もしくは1569(永禄12)年閏5月か。追而書の彦六郎は穴山信君か。

 折り返しの便を使って一筆啓上します。遠江国の実際の様子はいかがでしょうか。是非もない次第です。駿河国の中では敵方の調略が進んでおり、駿河の過半は破られている状況です。早々に報告を行なって下さい。この前線は放火攻撃が主体ですが、夜を継ぎ日を急いで馬を納めるでしょう。また、遠江国は心を替えましたが、駿河国衆はそれぞれ氏真の馬前を守り、三河国の防備は最初から氏真の本意を叶えるべく存在します。次の暫くの在陣をもって、関東のことは隙を空けることとなるでしょう。何れの戦線もあなたが詳しく調査して下さい。早飛脚を使って報告を待っています。
追伸:駿河国は必ず撃破するように聞き届けて下さい。まさにこの時なので、早々に馬を納めて、あの国の本意を急いで下さい。
 こちら方のあらゆる在所の情報をよくよく収集し、報告するのがもっともです。また、あちらへ送る書状は彦六郎へ渡すので、使者が出たらすぐにご連絡下さい。

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