[竪切紙]彼者つけ口上、いさいきゝとゝけ候、こゝもと、御ちんのうちハ、ゆふまた[しん]人しちをとられへく候あひた、いたしそこなわれて候てハ如何存候、こゝもと御馬ひけ候ハゝ、まやはし衆ハ、大小かけをち申へく候間、其方ものをは、いかやうにもひきとめ、いかやうにも一つの御ちうしん、もつともニ候、われゝゝ事ハ、みのわさいちやうニ候、また其方屋敷ニハ、斎藤つのかミ同心田口しかとさしをき候、ゆふちよの事をは、かのものこたへ申されへく候、かならすゝゝこゝもと御馬をきまり候をきゝとゝけ、そこもとゆたんのところを見あわせ、一てたてあるへく候、そうちやしゆニせちもちうしん申きもあるへく候、かのものなとひきそへ、しかるへく候事、もつともに候、この返事したい、ちきやうかたの御しうもんいたし申へく候間、そんふんたていさいかきたてたまハるへく候、まちいり候、以上、
二月廿八日
 氏邦(花押)
宇下 参
「五大力〓[草冠+并]
  参   安」(元は懸紙のウハ書きか)
→「北条氏邦書状」(大阪城天守閣所蔵宇津木文書)
1583(天正11)年に比定。

 あの者が言った内容は詳しく聞き届けました。こちらの御陣のうちでは、由良信濃守(成繁)が人質をとられるようなので、(そちらも人質を)出し損ねてはいかがなものかと思います。ここで御馬を引くようでは、厩橋衆は身分の大小を問わず逐電してしまうでしょうから、彼らを何としても引きとめるべく、なりふり構わぬ忠信を見せるのがよいでしょう。我々の方は、箕輪におります。また、あなたの屋敷には、斎藤摂津守(定盛)の同心である田口を確実に駐留させました。『ゆふちよ=結千代?』のことはその者がお知らせするでしょう。必ずやこちらの作戦決定を聞き届けて、あなたも油断なさらず作戦行動するのがよいでしょう。総社衆に『せちも』注進=報告があるでしょう。あの者たちを添えて、整然と行動なさるのが、もっともなことです。この返事があり次第、知行の決裁を出したいので、お考えのことを詳しくお書きになって下さい。お待ちしています。

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