桐野作人著・アスキー新書。史料ベースできっちり構成されている。とはいえ『関ヶ原前夜』と比較すると、二次史料の多用が目立つ。興味深かったのは、小早川秀秋の家臣である稲葉正成・平岡頼勝が、徳川家康側近の山岡道阿弥・岡野江雪斎と接触していたというくだり(189ページ)。
岡野江雪斎は、旧名板部岡江雪斎融成。北条氏規や笠原康明と共に後北条末期の上方外交を担当している。
『家臣団辞典』によると、関ヶ原合戦では、小早川勢の牢人笠原越前守が島津豊久を攻めたとのこと。ちなみに、稲葉正成の次男正勝は後の小田原藩主だったリする。
小早川秀秋の家中も色々面白そう。
書中少し気になったのが、「外実」を外聞と解釈していた点。これは「外聞與云、実儀與云」(https://old.rek.jp/?p=1754)の省略だと思われる。「外の見栄えも内情も」と解いた方がよさそうだ。