今度彦九郎号上洛、中途迄相越、親類被官人為書起請文、対清房相企逆心、一跡押而可請取之催、甚以不孝之至也、殊一城預置之上者、何時毛不得下知、一跡可請取事、自由之儀也、此上雖為父子納得、彦九郎進退不見届以前之儀者、一跡不可相渡、清房納得之上、表向雖申付、知行等之事者、彦九郎覚悟不見届間者、可為清房計、致今度之企本人有之由申之条、遂糾明、其段歴然之上、可加成敗、縦山林不入之地仁雖令居住、父子之間如此取持事、依為奸謀、如清房存分加下知、今度之子細取持輩之知行分於有之者、任先判形之旨、清房可為支配、重父子之間取持公事 申出、如何様之道理雖有之、最前之首尾条々為曲事上者、一切不可許容者也、仍如件、

永禄弐[己未]年

五月廿三日 氏真(花押影)

興津左衛門尉殿

→戦国遺文今川氏編「今川氏真判物写」(国立公文書館所蔵諸家文書纂所収興津文書)

この度、彦九郎が上洛と称して途中まで行き、親類・被官に起請文を書かせ、清房に対して逆心を企て、強引に当主になろうとした。大変な不孝者である。特に一城を預けておいたのだから、どのような時も指示を得ずに跡を継ぐことは勝手過ぎることである。父子で納得したといっても、彦九郎の進退を見届けていない状況では、相続を認められないだろう。清房が表向き納得したとはいえ、知行などのことは、彦九郎の覚悟を見届けていないのだから、清房だけの所有とせよ。この度の企ては本人がしたと言われているので、調査してそれが事実ならば成敗を加えるように。たとえ山林・不入の地に逼塞したとしても、この件で父子の間を取り持つことは陰謀と見なす。清房の思うとおりに動くように。この度の経緯を取り持つ者の知行は、先の判形の通り清房の支配とするように。さらに、いかなる理由があるにせよ、父子間の訴訟を申し出ても、この件は徹底的に誤りであるから、一切許しはしない。

Trackback

no comment untill now

Sorry, comments closed.