尾張国愛智郡内御公領井戸田・市部等御代官職事、末代所預申実也、但御年貢事先九月中肆拾貫文、同冬中肆拾貫文、都合捌拾貫文分、不混国中自社本所引懸、毎年可進納候、万一有無沙汰之儀者、雖為何時可有改替候、其時不可申一言之子細者也、仍所請之状如件、

延徳四年五月十六日

今川大夫判官

国氏判

→愛知県史 資料編10「今川国氏請文写」(実隆公記 永正二年十月二十二日条)

尾張国愛知郡内の公領、井戸田・市部などの代官職のこと。末代預かっているということは真実です。但し年貢は先の9月中40貫文、同じく冬中40貫文、合計80貫文は、国中の社・本所の『引懸』(判決?)より、毎年納付するでしょう。万一未進の場合は、いつでも改易して下さい。その際は一言も言い訳はありません。このように『所請』を行ないます。

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2 comments untill now

  1. 『所請』を行ないます・・・と、訳されていますが、『所請』って何んのことですか??
    上申文書での単なる「書止め」ではないのですか?

  2. コメントありがとうございます。『所請』という言葉は他に見つからなかったので、地頭請・守護請のようなものではないかと推測して釈文からそのまま引用しました。
    この書状が引用された三条西実隆の日記(http://rek.jp/index.php?UID=1248536828)には、本状の後に「井戸田・市部は当知行であり今川預所である」と記されています。禁裏御料所の徴税を今川国氏が確約した書状ですから、文末に「所(井戸田・市部)の徴税を請け負います」と締めくくったと考えると自然かと思われます。
    おっしゃるように「仍所請之状如件」は締めくくりの文言ですが、「仍如件」や「仍状如件」という完全な定型文ではなかったため、特に訳文に付加してみました(ただ、『所請』という言葉の類例が見つからなかったので仮置きで括弧をつけています)。