九日之註進状、今十二未刻、到来、越府へ憑入脚力度ゝ被差越由、祝着候、然而敵者、去年之陣庭喜瀬川ニ陣取、毎日向韮山・興国相動候、韮山者、于今外宿も堅固ニ相拘候、於要害者、何も相違有間敷候、人衆無調、于今不打向、無念千万候、縦此上敵退散申候共、早ゝ輝虎有御越山、当方之備一途不預御意見者、更御入魂之意趣不可有之、外聞與云、実儀與云、於只今之御手成者、笑止千万候、能ゝ貴辺有御塩味、御馳走尤候、恐々謹言、
八月十二日
氏政(花押)
毛利丹後守殿
→神奈川県史 「北条氏政書状」(前田家所蔵文書古蹟文徴六)
1570(永禄13)年に比定。
9日の注進書が、今日12日未刻(16~18時頃)に到着しました。越後府中へ飛脚を頼み度々ご連絡いただいているそうで、祝着です。敵は去る年黄瀬川に陣取って毎日韮山と興国寺へ出撃していました。韮山は現在でも外郭も堅固に維持しています。要害はどこも相違があってはいけません。兵員の準備もせず今攻撃しないのでしたら、無念千万です。たとえ敵が撤退するとしても、早く輝虎に越山をお願いします。我々の軍備に一途なご意見も預かっていないので、更にご懇意の趣旨はないことでしょう。外聞といい内情といい、現在の『御手成』は笑止千万です。よくよくそちらもご考慮の上、ご奔走が尤もなことです。