役と職

 中世の文書によく出てくるのが、「役」(やく)と「職」(しき)だ。この二つは現代語でもよく使われるが、意味が異なるので注意が必要となる。ここでは戦国時代を中心にこの二つの使われ方を紹介する。

 領主から賦課される、税金の一種。すべてを貨幣で支払わせる現代の税金と違って、実働を建前とした。武士が負う役としては、軍事出動を意味する「軍役」と、拠点の守備任務を意味する「番役」、土木工事任務の「普請役」がある。一般民衆である百姓には、夫役(労働)・陣夫役(戦時労働)・伝馬役(通信運輸)として課された。職人や寺社にも特殊な役が賦課されることがあった。百姓・寺社では実働を嫌って金銭による費用負担を希望するケースが多かった。

 元々は荘園のシステム内にあった職務。後に職権に伴う収益権益も指すようになり、職の体系という独自の仕組みを持つ。武士階級によって荘園解体が進むと、守護職や地頭職・名主職が出てくる。一方で商工業者の職も現われて後の「職人」につながる。職は一代限りのものから始まり、世襲が行なわれた後、売買の対象物となった。

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