結構苦手な作品だったので、読むのは今回が2度目。ディケンズ前期作品に見られる行き当たりばったりな展開もありつつ、主人公がアメリカに渡るまでの筋運びが異常に長い気がした。ディケンズが作った人物でも出色の俗物ペックスニフが登場するのだが……その他の人物には余りオーラが感じられない。
 独善主義の若マーティンがアメリカで苦労して改心するのだろうけど、アメリカ批判が冗長で観念的過ぎる感じがした。従者マークが『ピクウィック』のサム・ウェラーの出来損ないみたいだし、いまひとつ興が乗らないところ。父親殺しのジョーナス・チャズルウィットは面白い。有名なギャンプ夫人がどれだけ活躍するかにも期待が持てる。
 結局、悪役ぐらいしか精彩がないということか。もしくは本当の意味での悪漢小説なのか。

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