ニ都物語 上巻

 何故か書棚からなくなっていたので、改めて買い直して読んでいる。これが2度目になるが、最初に読んでから10年以上経過しているので初読に近い。
 フランス革命に巻き込まれたドクトル・マネットが中心になるが、今回は『モンテ・クリスト伯』(1846年)を読んでいたので影響がよく判った。チャールズ・ダーニー、ルーシー・マネットは余り印象がなかったが、今回もディケンズの手駒っぽさが消えない。ストライバーとシドニー・カートンのコンビは、『OMF』のライトウッドとレイバーンに似ている(4人とも弁護士)。ただ、ライトウッドが善人なのに対してストライバーは世俗的な小悪人。
 フランス革命の描写については、歴史的に古臭い解釈をしているためかチグハグ感が大きい。最近の研究では、フランス革命によってかえって国民経済は困窮したというデータも存在する。ディケンズは歴史作家ではなかったという証左ではあるが、やはり少し残念。
 脇役連ではミスター・ロリーがとてもグッド。自らを「事務屋」と称しつつも人情味を発揮し、銀行員としての体裁と人間性を両立する。横柄なストライバーがルーシーへ求婚しようとするのを、上手に回避する件はディケンズならではの妙味だ。引き続き下巻へ……。

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