一兵糧并馬飼料着陳之日ヨリ守為下行事

一喧〓(口+花)口論仕立候者、双方其罪遁間鋪事

一追立使押買狼藉有間敷事

一奉行人先主江暇を不乞主取仕候者、見付次第当主人江相届、其上を以而急度可申付、又届有之而奉公人を逃候者、当主人可為越度事

一城囲時、兼而相定攻手之外一切停止之事

一合戦出立先陳後陳之儀、奉行之可専下知事

 以上

永禄二年三月廿日

治部大輔(花押)

→豊明市史 「今川義元定書写」(松林寺文書)

 一、兵糧と馬の飼料は着陣の日から支給をなすことを守ること。
 一、出征日に相違なく出発可能にせよ。奉行達はその旨を守ること。
 一、喧嘩・口論を行なった者は、双方ともその罪を逃れられないこと。
 一、使いに追い立てたり強制購入、乱暴は行なわないこと。
 一、奉公人で、前の主人に辞表を出さず新しい主人に仕える者があれば、見つけ次第に現在の主人に届け、その上で取り急ぎ処分する。また、逃れた奉公人の告発があれば、現在の主人の落ち度とする。
 一、城を包囲する時、前もって決めた配置以外は一切行なわないこと。
 一、合戦での先陣・後陣のことは、奉行のみが指示すること。

「定条々」

一、来十日陣夫を相集、早速可出馬候、弥支度可被申付事、
一、其方者温気之砌ニ候間、此度者出陣被相止、留守尤候、人数之仕分之様子者、着到之内百人足柄、廿人其方ニ付置、貮百人参陣、可為此分候、然者此仕分悉記交名、来六日可被為見候、於此度者、関東之本意之際ニ候間、大事之動ニ候間、留守・動者共ニ少も無相違、手堅人衆之仕置可被申付候、就中前々被定置候軍法之品々、一色無相違様、是又改而可被申付事、

  已上

右、案所如件、

卯月三日

上総入道殿

→戦国遺文 後北条氏編「北条家定書写」(武州文書所収都筑郡宝袋寺文書)

年次不明。

 定。一、来る10日に陣夫を集めてすぐに出馬して下さい。念入りに支度を指示すること。一、あなたは健康が優れないので、今回の出陣は取り止めて留守がよいでしょう。部隊編成については、着到のうち100名は足柄、20名はあなた付き。残り200名を参陣するように分けて下さい。その編成名簿は来る6日に見られるようにして下さい。今度のことは関東での本意を遂げられるかの瀬戸際ですから、大切な戦争です。留守の者も出撃する者も共に少しの相違もありません。手堅く部隊編成を指示して下さい。とりわけ以前から決めておいた軍法の品々は1品でも相違がないよう、こちらも改めて指示すること。

着到定

一五拾九貫文 相州東郡 吉岡

此着到

一本 大小旗持、具足・皮笠、

一本 四方指物持、同理、

二本 鑓、二間之中柄、武具同理、

一騎 自身、甲大立物・具足・面防・手蓋、馬鎧金、

二人 歩者、具足・皮笠、

以上七人

一小田原於御蔵可請取衆

[五貫文 歩侍、甲立物・具足・手蓋

[弐貫四百文 二人扶持一本鑓 武庄左衛門尉

七貫四百文 二人同理 鈴木半右衛門

七貫四百文 二人同理 杉山惣次郎

七貫四百文 二人同理 大庭弥七郎

以上廿九貫六百文此内 廿貫文   給

九貫六百文 扶持八人分

以上

合拾五人 上下

此内

一本 小小旗 四郎左衛門

一本 指物  源十郎

六本 鑓 源四郎 平四郎 與五郎 三入 衛門四郎 藤二郎

一騎 馬上

四人 歩侍 清右衛門

二人 歩者 大郎五郎

以上拾五人

一此帳に書戴候寄手、或者闕落、或ハ令死去者、五日中令披露、一跡之様子下知次第可立之候、若号失念、五日を踏出相尋時令披露者、背掟条、寄子之跡他人ニ可申付候、其時公儀へ侘言不可付候事、

一御出馬より一日も遅罷立、一騎合有之者、則可披露候、若令用捨、御尋之上候者、背掟間、彼寄子可付他人候、公儀不可有相違事、

一武具仕置相背者有之者、其品ゝ何時も相註可披露事、

以上

右、改而着到如此相定候、武具等致様、委細ニ書記畢、各少も無相違可致之候、抑軍法者、国家安庄所也、背法度付而者、随罪科軽重、無用捨可被出条、兼而無誤様ニ覚悟専肝候、畢竟岡本前ニ可有之間、時ゝ刻ゝ寄子ニハ合助成、掟無異義可走廻儀、可為忠信候、仍定所如件、

元亀二年 辛未

七月廿八日

岡本八郎左衛門尉殿

→神奈川県史「北条家着到定書写」(北条家着到帳)

(計数部分省略)
一、この帳面に記載した寄手で、逃亡か死亡した者があれば、5日までに明らかにして下さい。補充は指示があり次第行なうように。もし忘れて5日を過ぎ調査の結果明らかになったなら、掟に背いたこととして寄子の跡は他の人間に申し付けます。そうなった場合に公儀(後北条氏)への陳情も受け付けません。
一、御出馬より1日でも遅れて出立する一騎合がいれば明らかにして下さい。容赦させた結果、調査で明らかになった場合、掟に背いたのでその寄子は他の人間に申しつけます。公儀も相違はないでしょう。
一、武具の準備に背く者がないように。その品々は常にリストにして明らかにしておくこと。
以上
右は改めて着到としてこのように定めます。武具などを備えるよう詳細に記載しました。各項目いささかの相違もないように。そもそも軍法は国家の安危を決めるものです。法度の違反については、罪科の軽重に従って容赦なく執行します。誤りのないように覚悟することが肝要です。畢竟岡本は前にあったので、時々刻々寄子に助成して、掟に異議なく奔走して忠信をなして下さい。