足軽衆中者人数不足之由、度ゝ雖及聞、とよもか為私公候間、不届者有間敷候、皮或之定番ニ者片時之間も不散、境目敵近リ候間、不可有油断候、加勢蕪木刑部太輔指遣候間、弥遣念可被入精候也、

永禄元年十一月二日

氏政判

金子左衛門大夫殿

山角紀伊守殿

→小田原市史 通史編 原始 古代 中世 別冊 小田原北条氏五代発給文書補遺 「北条氏政書状写」(水月古簡三)

 足軽衆が員数不足だと度々聞き及んでいる。とはいえ、『とよもか』私と公をなすので、不届きがあってはならない。『皮或』(川越?)の定番には片時も隙があってはならない。境目で敵が近寄ってきていますから、油断しないように。加勢に蕪木刑部大輔を派遣しますから、ますます念を入れて精を出すように。

きす御痛之由披露申候、いしや被仰付候得共、未罷着候、軈而可越由被仰出候、可御心安候、以上、
二月廿日
康忠(花押)
「(奥ウハ書)宇津木殿  御報   垪伯」

→群馬県史 「垪和康忠書状」(大阪府宇津木文書)

 傷が痛んでおられるとのこと報告しました。医者を呼ぶよう指示して下さいましたが、いまだに到着しません。すぐに来るだろうとの仰せです。ご安心下さい。

遠州へ加■衆之事

八騎 遠山自分

一騎 遠山左馬允

一騎 中条

一騎 会田

一騎 本田

二騎 嶋津

二騎 伊丹

二騎 千葉殿

 以上十八騎

十八人 馬之口取

十八本 鑓

一本 大小旗

 以上卅九人

 合五十七人

一馬上一騎之仕立、肪当迄可被申付候、第一遠国石地ニ候間、馬ニ極候、此一ヶ条を別而入精可被申付候、

一馬之口取、皮笠・手蓋迄可被申付候、

一指刀、何も遣念可被申付候、つかの短不披見候間、馬上歩者共ニ相当之長つかを可被申付候、

一鑓二間ゝ中柄、法之長ニ候、金を新推立尤候、

一大小旗、当方定之如寸法、いかにも結構ニ可被申付候、紋ニ極候、

一鉄炮放、是又可放者可被申付候、仕立者当方にて定置如法、

一十八騎之馬上、自元何も可為指物、四方如寸法、新是又極紋候、

一十八騎之物主、一騎同心にても被官にても於其手も此衆をも可引廻程之者可被申付候、

  已上

右、大方如此可有支度候、羽柴退散之由雖注進候、加勢之儀近日可有一左右旨、内者申越候、俄ニ者可為無調間、兼而申出候、直ニ加勢所望之儀有之者、重而可申候、仍如件、

十月二日[虎朱印]

遠山右衛門大夫殿

→小田原市史 通史編 原始 古代 中世 別冊 小田原北条氏五代発給文書補遺 「北条家虎朱印状」(長野市山崎元氏所蔵)

継ぎ目の裏に「調」朱印の捺印あり

(計数部分略)一、馬上は一騎の仕立てとし、頬当てもつけさせて下さい。第一に遠い国のことですから、馬に極まります。この1箇条を特別にして精を出して指示なさって下さい。一、馬の口取りは皮笠と籠手を付けさせて下さい。一、指す刀はどれも念入りに指示するようにして下さい。柄が短いと披見しないので、馬上も歩者もともに適切な長い柄を指示して下さい。一、槍は2間の中柄、法の長さです。金属を新たに箔すとよい。一、鉄砲の射手はこちらも放つ者を決めておくように。支度はこちらで定め置いた法に従え。一、18騎の馬上侍は、元より何れも指物をつけるように。四方は寸法のように。新たにこちらも紋を染めなさい。一、18騎の物主は、一騎合の同心でも被官でもその戦線もこの部隊も動かせるような者を宛てて下さい。以上。右は大体このように支度するべきものです。羽柴が退散したとの報告がありましたが、加勢のことは近日一報があるだろうのとの旨、内部で連絡があります。急に準備を解かないよう、かねてから申し出ています。じきに加勢の要望があれば、重ねて申すでしょう。