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北条氏政、豊前山城守が北条氏照の治療を行なったことを感謝する

急度以使申候、源三散ゝ煩由申越候、一段致恐怖候、貴辺憑入度由、遣使由不及候、御苦労候共、一夜帰、早ゝ御越御覧被届、一薬憑入外無他候、猶嶋津弥七郎可申候、恐々謹言、

正月十日

氏政(花押)

豊前山城守殿

→神奈川県史 資料編3「北条氏政書状写」(豊前氏古文書抄)

 取り急ぎ使者を使って申し上げます。源三(氏照)がさんざんに煩っていることをお伝えていただいて、一段と恐怖に思っていました。あなたに頼み込みたいことは、使いを出していうまでもなく、ご苦労ではありますが、一晩だけ帰ったら早々にお越しになって診察されて、『一薬』に頼るほかはありません。さらに嶋津弥七郎が申し上げるでしょう。

コメント 3

  • 高村さんの、いつも精力的な古文書のご紹介で、色々と勉強させていただいております。
    先日は、水野氏史研究会でもご指摘ご教示頂きありがとうございました。
     今回は、貴サイトに掲載されています記事の中で「急度」を検索しましたら、32件ヒットしました。
     この「急度」の解釈については、今研究中の古文書にも出てきており、色々調べております。『基礎 古文書のことば[三訂版]』では、「急度」は、このほか「吃、吃度、屹度、〓(「公」の下に「心」」があり、意味は、「間違いなく。必ず。厳重に。厳しく。」とあります。また『大漢和辞典』の「急度」では、「1必ず。是非とも。2ちょっと。すぐに。3おごそかに。きびしく。4ぢっと。動かずにゐるさま。5ずっと。」とあります。
     貴サイトでは「急ぎ、早急に、取り急ぎ、急場、近々に、すぐに」が大半を占めていますよね。
    「急ぎ」の例として、
    ・急度申候 → 急ぎ伝えます
    ・先当年貢急度可弁済物也、→ まず今年の年貢を急ぎ納付するように、
    など多数ありますが、
    「必ず」の例として、
    「今川義元、尾張国雲高寺に禁制を出す」
    ・急度依注進可処厳過者也、 → 報告に基づいて必ず処罰する。
    「後北条氏、坂間郷の代官・百姓中に陣夫供出の方法を指示 」
    ・急度以現夫可走廻者也、 → 必ず現在の陣夫を走り回らせるように
    「結城政勝、大藤式部少輔の戦功を氏康に伝えることを約束 」
    ・此趣氏康へも急度可申届候、 → この事は氏康へも必ず伝えておきます。
    「武田晴信、秋山善右衛門尉と室住豊後守に守備方法を指示」
    ・急度注進待入候、 → なお交代のことは必ず報告しますから待って下さい。 
    また、急度を直接解釈していないと思われるものに、
    「足利義輝、今川上総介と北条左京大夫、武田大膳大夫入道に停戦依頼 」
    ・急度加意見無事之段、可馳走事肝要候、 → 忠告して無事に済むよう奔走して下さい。
    「武田晴信、秋山善右衛門尉と室住豊後守に守備方法を指示 」
    ・急度伝馬銭相調、 → 伝馬銭を調達して
    「今川義元、三浦左京亮に西尾城番の勤務を指示」
    ・急度可加異見者也、
    が見られます。
    このほか、「急ぎ」と解釈しておられるものの中に、もしかして「必ず」でも意味が通じそうなものも含まれているように思いますがいかがでしょうか。
    「伊勢宗瑞、小笠原定基に挨拶し今橋攻城を戦況を伝える」
    ・爰元急度落居候者、 → 急ぎ落城させますので
      → 必ず落城させますので
    「北条綱成、新左衛門に三浦郡上宮田での無許可伐採禁止を通達する」
    ・急度召連当地可来候、 → 急ぎ当地へ連行して下さい。
      → 必ず当地へ連行して下さい。
    「長坂虎房、天野安芸守に遠山孫次郎への仲介を依頼」
    ・不令異見急度被出人質出仕候様、 → この上は意見を挟まず急ぎ人質を出して出仕するよう、
                    → この上は意見を挟まず必ず人質を出して出仕するよう、
    私が、いま調べている古文書に、
    ・「急度被仰遣候、其地普請何程出来候哉、……」というものがありますが、この解釈としては、「急ぎ仰せつけられる」か、もしくは「厳しく仰せつけられる」が考えられますが、この場合は、どちらが適切でしようか、御教示ください。

  •  コメントありがとうございます。「急度」についてはかなり迷っているところがあります。行為者が未来に向けて指示を出す(必ず~とせよ・必ず~とする)という意味合いも感じられましたので、一部「必ず」と解釈してみました。とはいえ、邦訳日葡辞書では「急ぎ」という意味しか出ておらず、なおかつ「必」自体も使用されている都合上、ほとんどが「急ぎ」という解釈で問題ないと考えております。
     現在こちらに手が回りませんが、5月中に「急度」語彙についてまとめつつ、ご指摘いただいた各解釈も見直そうと思います。畏れ入りますが暫くお待ち下さい。
     また、「急度被仰遣候、其地普請何程出来候哉」は前後が判らないので解釈できませんが、後文が疑問形なので、前文主体はその質問をするよう指示を受けたこととなるでしょう。とするならば前文は「急に指示なされました」が自然かと思われます。あくまで全文を見て解釈する必要がありますが、一先ず私見をお伝えします。

  • お忙しい中、早速ご教示いただきましてありがとうございました。
    なるほど、「急に指示なされました」とは、思いが至りませんでした。
    これで、ようやく悩みがすっきりしました。深謝し採用させていただきます。

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